ある年の春。作業をしている最中に、たまたまフェースブックで一枚の写真を見て、目と心がぱぁっと開いた瞬間がありました。
それはValencia de Alcantaraという街で撮影されたドルメンの写真。
こんな美しい景色があったんだ・・・。
これまでに何度かエストレマドゥーラ地方を訪れたことはありましたし、ValenciaやAlcantaraにも足を延ばしたこともありますが、この2つの名前がくっついたValencia de Alcantaraとは・・・。存在すら知りませんでした。それなのにそれからというもの、テレビをつければValencia de Alcantaraのドキュメンタリーが放映されていたり、開く雑誌にはValencia de Alcantaraの写真が掲載されていたり・・・。これまで私の人生に存在していなかった街が連続して私の生活に飛び込んでくるようになったのですからとても不思議だったのですが、出会いを自ら呼びこんだともいえるかも知れません。
行って見たい。この街に春に行って見たい・・・。そう心の片隅で思いを募らせること数ヶ月。地元の旅行業者からのご招待を受けてエストレマドゥーラ地方のカセレス県にある、Valencia de Alcantara(バレンシア・デ・アルカンタラ)へに出かけることができました。この地方の美しさ、人々の暖かさ、何とか日本の人にも知っていただきたい・・・。
行きたいが適うと、今度は共有したいという願いがふつふつと湧いてくる。
でもまだまだ日本では未開・未知のこの地方。いくら美しいとはいえ、いきなりマイナーな土地について書くのもどうなのかしら?
と一旦気持ちを落ち着けて(笑)、まずエストレマドゥーラ地方についてほとんど知らないよ、という方の為のガイドラインになるようなページが必要。ですからまずはこの地方についてのごく一般的な旅のアドバイスを纏めようと思います。
(州の大きさとか県の数とかについてはウィキペディアでも日本語でありましたのでまずそちらをご紹介しておいて、ブログ内ではそれらについては触れないこととします。)
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エストレマドゥーラ地方についてウィキペディアで知ってみる(日本語)
==> こちらからどうぞ
さて、事前知識を少しウィキペディアで仕入れたところで、日本語であまりかかれていない地方の素顔について、もう少し詳しく知ってみましょう。
歴史好き、遺跡好きにお奨めしたいメリダのローマ遺跡群
エストレマドゥーラ州には2つの県(バダホス県とカセレス県)がありますが、その州都に当たるメリダという街(バダホス県)はスペイン最大、多数のローマ遺跡群が見られる街なのです。ローマ遺跡ならローマで見たらいいじゃないですか?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、かつてはイベリア半島までにもその領域を広めたローマ帝国の規模を今一度考えると、イベリア半島にもローマ帝国時代の遺跡が実は“かなりたくさん”残っていることは納得いただけると思います。現在のメリダ全体がローマ帝国の街だったと思うだけで、なんだかわくわくしてしますよね。
メリダはサラマンカからイタリカ(現在のセビーリャ県に残るローマ遺跡群)への銀の輸送路(これが現在も伝わる銀の道のこと)の中間地として、ローマ初代皇帝アウグストゥスとその腹心アグリッパの時代に大いに栄えた街。その後、現在のポルトガルとエストレマドゥーラの大部分を統治するに到るルシタニア(ローマ帝国属州)の州都となり、Ermita Augustaと呼ばれ、ローマ帝国の中でも最も重要な都市となったそうです。
歴史の流れと共に次第にこの地方全体が忘れ去られ、経済発展の中心からは遠ざかっていってしまいましたが、この街に残るローマ帝国の遺産は歴史的価値の高さ、遺跡群の広がっている範囲の広さ、数など、あらゆる要素の価値全体が高く評価され、メリダは1993年から考古遺跡群としてユネスコの世界遺産に認証・登録されています。
それほど栄えたメリダの街。本国イタリアローマに負けず劣らずのローマ遺跡が残っていますから、余裕があれば2泊ぐらいの時間をとってじっくり見学をしていただきたいところでもあるのです。
ローマ橋(入場無料)
メリダを流れるグアディアーナ川にかかる全長792メートルもある紀元前1世紀の石橋。橋は60以上ものアーチで支えられており、その規模の大きさに圧倒されるでしょう。世界に現存する古代の橋の中では最長だとも言われているそうで、納得。もちろん現在も通行可能です。
※余談となりますが、エストレマドゥーラにはグアディアーナ川以外にもタホ川が流れています。タホ川には有名なローマ時代の橋が2つ現存します。一つはトレド(カスティーリャ・ラ・マンチャ)にあるアルカンタラ橋(3世紀)。もう一つは同じくエストレマドゥーラのアルカンタラ(カセレス県)にある同じくアルカンタラ橋(2世紀初頭)。同じローマ時代の橋といえども、規模はメリダの方がずっと大きく見ごたえがあります。美しさの面では(個人の好みでもありますが)アルカンタラ(カセレス県)のアルカンタラ橋(ややこしい!)に一票です。こちらの橋はユネスコの世界遺産登録目指して活動を続けています。興味のある方、スペインに一つでも世界遺産が増えて欲しいと思っている方は、フェースブックから彼らの活動を応援することもできますので、カウントを次に紹介しておきますね。
アルカンタラ橋を世界遺産に!オフィシャルFBカウント =>Puente de Alcantara Patrimonio Mundial Ya!
トラヤヌス帝の門(入場無料)
かつては宗教的な祭事を行う神殿への向かう神聖な門であったとされ、当時は同様の門が他に2つあったそうですが、現存するのは3つあった門のうち最大のもの。門には扉があり、大理石の外装がなされてたようですが、時の流れと共にそれらはなくなってしまっています。
ディアナの神殿(入場無料)
コリント様式の美しい柱に支えられる神殿。宗教祭事を行うことを目的に、紀元前1世紀に建てられたそう。街をぶらぶらしていると必ず出遭えます。

ディアナの神殿。 写真©エストレマドウーラツーリズムオフィス http://turismoextremadura.com
ローマ考古遺跡群(Conjunto – Histórico Arqueológico Romano)
前述の三つのローマ遺跡を含め、メリダ内に現存する29のローマ時代の建造物・遺跡群の総合がこのように呼ばれています。ほとんどの遺跡が見学無料-つまり野ざらし状態(笑)ですが、有料の見学箇所に対しては数種類の入場券が用意されています。
タイプ1:Conjunto- Histórico Arqueológico
なんといっても最大の見所は、スペイン国内でも最大のローマ劇場(Teatro Romano)とローマ円形劇場(Anfiteatro Romano)。この二つを含め、有料見学箇所のすべての入場券を含めるのがこのタイプ。劇場と円形劇場以外にはアルカサバ、ミトレオ邸、ローマ納骨堂葬儀エリア、サンタ・・エウラリア教会の地下礼拝堂、モレリアの考古学遺跡エリア、ローマ(戦車)競技場が含まれています。
一般(大人)入場券 : 15€
12歳以上18歳未満 / 65歳以上シルバー : 7,50€
12歳未満の子供は無料
タイプ2:Teatro + Anfiteatro
ローマ劇場と円形劇場だけの入場券。こちらの二つは入り口が共通です。滞在期間の関係上最大の見所以外見る時間がない、という場合は、こちらのチケットがお奨めです。
一般(大人)入場券 : 12€
12歳以上18歳未満 / 65歳以上シルバー : 6€
12歳未満の子供は無料
タイプ3:モニュメントごとの入場券
タイプ2で済ませる予定だったけれど、追加で他も見ることになった、という場合は、タイプ2以外のモニュメントごとに入場券を購入します。
一般(大人)入場券 : 3€
12歳以上18歳未満 / 65歳以上シルバー : 6€
12歳未満の子供は無料
ローマ劇場と円形劇場の見学時間(2018年1月の情報です)
モニュメントの見学は、モレリア以外は毎日見学可能。ただし12月24日,25日と1月1日は閉館です。また12月31日は午前中のみの見学となりますのでご注意ください。
見学時間:9時~18時まで。(チケット窓口は17時30分に閉まります。)

ローマ劇場。 写真©エストレマドウーラツーリズムオフィス http://turismoextremadura.com
基本、入場券は団体予約は別として、個人入場であれば当日購入で問題ないはずです。ですが事前に入場券を購入して、確実に確実に入場できるようにしておきたいという方は、オンラインでも事前購入が可能です。メリダまで行って最大も目的、ローマ劇場が閉まっていた!なんてことを防ぐためにも、入場券の事前確保は予定を確実にするという意味合いもあって、さらに安心できますね。
メリダの入場券は全てConsorcio Merida(メリダ協会)という団体が管理しています。前述の入場券に関する情報はこのメリダ協会のウェブサイトを参照させていただきました。(スペイン語のみ)
なお、スペインの扉とメリダ協会はリンクしていませんので、入場料金が値上がりしていた、などというケースが今後起こりうるかもしれません。念のため書き記しておきます。
入場券の事前購入はその団体のオフィシャルサイト上にでもリンクが貼られているページから可能となっています。
メリダの入場券購入はこちらからどうぞ
ちなみに、入場券購入ページは、それぞれの見学箇所などについてはスペイン語、アクションボタン(Buy, Whenなど・・・)は英語になっています。中途半端ですが感覚で完了できそうですのでがんばってください!日本からのアクセス、購入件数が増えると、そのうち日本語の案内も作ってくれるかも知れませんよね~。
素通りしないで欲しい!メリダ国立ローマ美術博物館
Museo Nacional Del Arte Romano de Merida。
こちら1986年にオープンした美術館で、ローマ劇場、円形劇場の出入り口から比較的近い位置にあります。以前はローマ劇場、円形劇場の入場時間が午前と午後に別れて間にシエスタがあったので、遺跡群の観光+博物館も見学というスケジュールが組みにくかったのですが、今はシエスタ無しの入場時間となったので、メリダ滞在が一泊でも、上手に組めばこのどちらも見学が可能になりました。
近代的な建物の中には、驚くほどのローマ様式モザイク画の展示と銅像、装飾品の展示がありかなり見ごたえがあり、個人的にはとってもお奨めです。入場料は、これだけのコレクションが見られてたったの3€!是非、冷かしだったとしても入場してくださいね。
国立ローマ美術博物館 :オフィシャル公式サイト => こちらからどうぞ(スペイン語のみ)
開館日・時間 は以下の通り。
冬季:10月1日~3月31日
火曜日-土曜日 :9時30分~18時30分 // 日・祝日 :10時~15時
夏季:4月1日~9月30日
火曜日-土曜日:9時30分~2000時 // 日・祝日 :10時~15時
※毎週月曜日、12月24日、25日、31日/1月1日 + 2日エストレマドゥーラの祝日に重ねた移動祝日あり。
入場料: 3€
スペインの扉からの旅の1ポイントアドバイス
メリダまでのアクセスはマドリードからバスでも電車でも、乗車時間、便利、値段どちらを比較しても甲乙つけがたいレベルです。しいて言うならば、バスのほうが経済的、電車のほうが景色が少しだけ楽しみが増えるような気がしますが、これも個人の好みかも。見所の多い旧市街中心-ローマ劇場付近までは、バスターミナルからもRENFEの駅からもほぼ同じような距離です。見所が多いので宿はやっぱり旧市街中心にあるパラドールが一番のお奨めです。私が自分の旅やお客様用にbooking.comでホテルや値段をチェックしていると、パラドールは通常の料金から5000~8000円近くディスカウントしている日にちとかもあるので、計画するならよく確認するといいですよ!
今日も最後まで読んでいただき有難うございました。
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スペインの扉はスペインファンの輪を広げるため、日本の皆さんにとってもっとスペインが近くに感じられるような
空間を目指しています。
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※あとがき※
Valencia de Alcantaraについてはいずれ一本立ての情報記事を書こうと思っておりますが、出会いの一枚の写真についてはフリーマガジン“Acueducto/27号(38ページ)”にて記事を掲載させていただいていますので、よろしければあわせてどうぞ。
トップページ写真: ©dr_zoidberg
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