“かつての生活”という名の宿 – Hotel Rural La vida de antes 

by 土屋 寛子

Hotel Rural La vida de antes “かつての生活”というなの民営ホテル ロビー吹き抜けの天井部から訪問客を見下ろす猫の図。

時間が止まればいいのに・・・きっと誰しもが一度は願ったことがあるのではないでしょうか。筆者がそう願う時は、例えば最高に幸せなひと時をすごしている時であったり、逆に起こってほしくないことが目の前に近づいている時であったり。でもよく考えてみれば、時間の概念は人類が創造したものなのだから自分でそれを取り払ってしまったらいいじゃない。そんなことが電気のスイッチを入れたり消したりするみたいに簡単にできたら・・・

 

プチ旅行の薦め

仕事をしていたり、子育てがあったり、誰かのお世話をしていたり、何かと自分の都合ではどうにもならないことが多いせわしない日常と責任感から、せめて週末だけでも開放されてどこかでゆっくりしたいなぁと思ったときに最高なのがプチ旅行。清涼飲料水を飲んだときみたいな爽快感、あぁ幸せ、と思わず声に出したくなる気持ちを感じられる演出を自分でしちゃいましょう。

lavidadeantes中庭 パティオ

たまにはのんびり猫や犬のような時間の過ごし方をしましょうよ。

 

せわしない日常のストレスから開放されるために出かける旅なのだから、移動にあまり時間がかかっても逆効果ですよね。筆者はマドリードに住んでいるので移動時間は最高でも2時間以内の場所がいいな、しかも見たことがない物にも出遭って見たいな、としばらく思いあぐねていたら、折しもコンスエグラの夏の風物詩、“Consuegra Medieval” の開催される週末であることを思い出しました。コンスエグラまでは車で1時間半弱。見たことのないお祭り。思い立ったら吉日!即決で行き先決定です。

 

プチ旅行では宿にこだわりたい

行き先が決まったら次は宿。筆者のこだわりは、“プチ旅行では宿にこだわること”。だって日常からせっかく一瞬だけでも逃避する贅沢なのだから、宿も、訪問先も、食事処も自分の生活とはかけ離れたものがいいですよね。コンスエグラは小さな町なので大きなホテルはありません。でも田舎には田舎の生活、田舎のおもてなしがあるはず。そう思って当地に詳しい友人に聞くと、素敵な宿を教えてくれました。 その名も“かつての生活  / Hotel Rural La Vida de antes” 。まだガイドブックなどには紹介されていませんが今回のプチ旅行に相応しい名を持つお宿。Rural(ルラル)とはスペイン語で「田舎の、農村の」という意味です。スペインにはこういった田舎風民宿/ホテルが地方に行くとたくさんあり、筆者もこれまでに何度も民宿に泊まったことがありますが、ここは・・・本当に大当たり!!でした。

かつての生活 概観。ラ・マンチャ地方の建築様式の2階建ての建物です。

“かつての生活” 概観。ラ・マンチャ地方の建築様式の、2階建ての建物です。

 

田舎風宿 “かつての生活 Hotel Rural La vida de antes”

19世紀の典型的なラ・マンチャ地方の古い2階建ての建物をホテルに改装したその空間は、足を入れたその瞬間から別の世界へ運んでくれます。そう、生活する場所が憩いであり、集う場所であったかつての時間に追われない世界。宿泊客が、「かつての生活は現代ほどあくせくしていなかったよね」と思い出せるような空気が漂っています。

ロビーはパティになっているので、吹き抜けに。朝になると天井の日よけを開き、夜になると(あるいは雨天だと)日よけを閉める。そんな当たり前の行為と工夫がなぜが都会からくると珍しくみえたりすることってありますよね。

ロビーはパティオになっているので、天井は吹き抜けに。朝になると天井の日よけを開き、夜になると(あるいは雨天だと)日よけを閉める。そんな当たり前の行為と工夫がなぜが都会からくると珍しくみえたりすることってありますよね。

 

筆者達がホテルの中に入ってしばらくそのかわいらしさにうっとりしてると、どこからか一人の女性が出てきて、

「あなた方はXXXさん達ね。お待ちしていました。」を笑顔で受付へ案内してくれました。

チェックインの手続きを済ませた後、

「必要な時はこのベルを鳴らしてくださいね。」

と呼び出しベルを指差し、一緒に部屋まで案内してくれたエレーナさん。気さくな中にも礼儀は忘れない言葉遣いと声のトーンまで心地よく響きます。
案内された部屋は2階にある“La Falleba”。小さなホテルには9部屋しかなく、それぞれに名前があり、それぞれの内装と装備にも個性があります。“La Fabella”にはデラックスなジャグジー風呂が付いていました。

「ここでは普通の家と同じように、夜遅くなると玄関には鍵をかけて閉めます。だから部屋の鍵を持って出かけてくださいね。でも心配は要りません。もしも受け付けに人のいない時間であっても、オーナーもここに暮らしているので、何かあったらこちらへ電話をしてください。」

 

カードキーではないかつての鍵。これらの受け渡し行為が必要になることでスタッフとゲストの間にもコミュニケーションの数が増える。こういった鍵を通じたコミュニケーションは都会のデラックスホテルでも重要視しているところもあります。

カードキーではないかつての鍵。これらの受け渡し行為が必要になることでスタッフとゲストの間にもコミュニケーションの数が増える。こういった鍵を通じたコミュニケーションは都会のデラックスホテルでも重要視しているところもあります。

 

なるほど、私達が到着したときにパティオから出てきて顔を出した犬はオーナーの犬でした。スタッフも「生活の延長」のようなスタイルで働いているようで、受付に常に人がいるわけではありません。それぞれが必要に応じて生活に必要なことをしている・・・そんな印象を受けました。もちろんその中に宿泊客は招かれ、ホテルが提供する心地よい空間で思い思いの時間を刻むこと、それがこのホテルのコンセプト。

ひっそりとしたロビーには光のカーテンに包まれるようにソファーが配置され、そこはまるで光と影の対話を楽しむための劇場のよう。ロビーに面して朝食の部屋、暖炉の部屋/読書部屋、談話の場、パティオへ通じる扉、受付の扉といろいろな扉と空間があり、それらを古いスペインタイルの床が個性を添えています。

ロビーの雰囲気。座る人同士のエチケットが守れる範囲の距離でありつつ、自然と会話が生まれる距離感もあるソファーの配置が心地よい。

ロビーの雰囲気。座る人同士のエチケットが守れる範囲の距離でありつつ、自然と会話が生まれる距離感でもあるソファーの配置が心地よいですね。

 

目覚められた幸福感

かつての生活を考えてデザインされて再現した目にするすべてのディーテールに筆者は滞在中小躍りの連続でした。

固めのマットレスのベッドは眠り心地抜群。5星のデラックスホテルにあるような大きなジャグジー付きのお風呂にバスソルト。お部屋の冷蔵庫はいわゆる課金制のミニバーではなく、外から持ってきた飲み物や食べ物を冷やして置けるようにと設置された心配り。

こんな素敵なところですごした一夜の後は、朝ごはんも楽しみです。実は筆者は朝ごはんを家の外で食べるという行為が大好きです。コーヒーとクロワッサンであろうと家の外で食べることが小さな贅沢だと思えませんか。この宿の朝食サービスは筆者の小さな贅沢への期待を裏切りませんでした。

Consuegra Medievalを目当てにやってきたと思われる宿泊客のほとんどが前の晩は遅くに就寝したと見え、もう9時半すぎだというのにロビーも朝食の部屋もひっそりとした心地よい静寂に包まれていました。

快適な目覚めの後は暖かい朝食サービスのおもてなし。ここにも小さな宿ならではの気配りがあちこちに。

快適な目覚めの後は暖かい朝食サービスのおもてなし。ここにも小さな宿ならではの気配りがあちこちに。 名物ラ・マンチャチーズももちろん並んでいました。

 

すでに準備されていたビュッフェから好きなものを選びテーブルに着き、朝ごはんのディーテールまで如何に素敵かと連れと話をしていたところ、しばらくして私達の声を聞きつけてどこからか女性が現れました。

「おはようございます。すぐにコーヒーと絞りたてのオレンジジュースをお持ちしますね。トーストも召し上がりますか。そこにあるのは自家製のキャロットケーキとチョコレートケーキです。是非試してみてください。」

と私達に声をかけた後にこやかにサービスを始めてくれました。

あぁ、なんてすばらしい朝なのでしょう。ちょっと前に滞在したバルセロナの4星ホテルに並んでいたコーヒーマシーンと粉と水で出されるジュースメーカーがならんだ、がやがやしてせわしない空間での味気ない朝食を思い出し、心の底からこの宿で目覚めた幸福感を味わいました。煎れ立てのコーヒー、本当においしかったなぁ。

至福の朝食タイムを終えて、私達は外のパティオへ出かけてみました。同じようにテーブルセットがいくつかあり、水汲み場から流れる水の音が石の床と壁に反響して響き渡る・・・マイナスイオン効果抜群です。小さなプールもありました。こんなところで生活できたらどんなに幸せなんだろう。

 

裏の中にはには胡桃の木が生えていてちょうど緑色の小さな桃のような柔らかい皮に包まれた実がたくさん付いていました。こぼれる朝にも何もか調和に溢れていました。

裏の中庭には胡桃の木が生えていてちょうど緑色の小さな桃のような柔らかい皮に包まれた実がたくさんなっていました。こぼれる陽光と水の音、澄んだ空気・・・何もか調和に溢れていました。

 

たった一泊だけのかつての生活疑似体験。期待以上の幸福感が味わえてとても名残惜しくもあったのですが、しばらく中庭でおしゃべりをした後、本来の目的、Consuegra Medievalを見学するため宿を後にしました。

Hotel Rural la vida de antes 詳細

公式サイト(英語あり)はこちら

予約は公式サイトのコンタクトからメールで受け付けてもらえます。英語で問題ないようです。スタッフのほとんどが英語でのコミュニケーションは可能だと言っていました。日本人観光客の間ではまだぜんぜん知名度がありませんが、スタッフの方いわく、中国からのお客様がちらほら増えてきていると。なんでも中国人の新婚さんがコンスエグラの風車のある丘でドレスを着て新婚旅行の記念撮影をしに来られるのだとか。ガウディのサグラダ・ファミリアとコンスエグラの風車のどちらかを選ぶとすると、筆者は風車を選ぶと思いますが、これは理解できるようで理解できないような・・・好みの問題ですね。

英語にあまり自信がない、英語のやり取りが面倒だ…というかたは、booking.comなら日本語で予約が可能ですよ。

 

今日も最後まで読んでいただき有難うございました。

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2 コメント

  1. 佐々木愛

    サラゴサ ハカで検索してつちやさんのブログにたどり着きました。30年前に私もハカのサマースクールに参加しました。子育てと仕事に追われた日々が終わってこれからの人生をどう楽しもうかと考えています。もちろんスペインにもまた滞在したいのでブログ楽しみにしています。とりあえずバックナンバーを読みあさってみます。

    返信する
    • Hiroko Tsuchiya

      こんにちは~。佐々木さん!ようこそスペインの扉へお越しくださいました。30年前にハカに?それはなんだかとっても貴重な体験を共有していますね、私達。それだけでなんだか親近感か沸いてきます。子育て、お仕事が一段落終わったのなら、懐かしいスペインへ、スペイン語のブラッシュアップに、どこかいなかでのんびり2,3週間滞在してみたくなりませんか?この国もずいぶん変わりましたけれど、田舎はまだまだ私の好きなスペインが残っていますね。ブログは定期的に、希望量だけアップできておらず申し訳ありませんが、引き続き応援してくださいね!

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