カミーノ-巡礼 初の完全踏破体験インタビュー

by 土屋 寛子

北スペインにあるキリスト教の3大聖地と呼ばれるサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂。ここ近年、聖地のあるガリシア政府観光局の長年に渡る地道な働きかけの甲斐もあり、日本でもスペイン=北スペイン/巡礼街道の認知度がとても上がったとスペインの扉も実感しております。幸運にも、ツーリズムEXPOジャパンで、実際に巡礼街道を踏破された、または何度も何度も歩いたという方々にお会いする機会に恵まれて、巡礼のすごさを垣間見ることができました。そんな流れで、今回のスペインの扉は、実際に巡礼街道(CAMINO-カミーノ)を歩かれた中西さんに旅博の期間中にお伺いした巡礼体験談をお届けいたします。

 

日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会の中西さん

日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会の中西さん。 写真はご本人からご提供いただきました。

 

 

巡礼との出会い

(スペインの扉)

- サンティアゴ巡礼をしてみようと思ったきっかけはどういったものだったのでしょう?

(中西さん)

-   海外出張をきっかけに外国の知らない街を旅する楽しみを覚えて、アジアの国々をこれまでにも訪れたしてきたのですが、早々に物足りなさを感じてしまっていたんですよ。そんなとき、サンティアゴ巡礼というものがあることを知ったんです。2010年頃ですね。それから友の会のガイドブックを買い、巡礼報告会に足を運んで情報を集めました。

(スペインの扉)

- 実際に歩かれたのはいつのことですか?

(中西さん)

-   2013年3月にフランス人の道サン・ジャン・ピエ・ド・ポーから歩き始めました。

(スペインの扉)

- 一度の旅でフランスから一気に巡礼地まで歩かれたのですか?

(中西さん)

-  いいえ。会社員ですし、家族もいるので。私の場合はトータル4回の渡航で3年2ヶ月の道のりです。最後の100キロを歩いてコンポステラ(巡礼証明書)をもらうというのもありですが、私の場合、どうしても最初から最後まで全部歩いてみたかった。だからやり遂げたときは感無量でした。今年2016年のゴールデンウィークを利用して、最後の110kmを歩き、トータル780km、35日間の巡礼に幕を閉じたばかりなんです。

 

プエンテ・デ・ラ・レイナ (女王の橋)。写真-スペインの扉

プエンテ・デ・ラ・レイナ  (女王の橋)。写真:スペインの扉

巡礼/カミーノの魅力

(スペインの扉)

- それだけ惹かれるような体験というとなんだか壮大なロマン、冒険や派手で印象に残るイベントやハプニングが相当あったのでは?

(中西さん)

-  巡礼は歩いて、食べて、寝る以外はあまりできない極めてシンプルな生活の繰り返しです。歩くことが生活のうえでの役務というか。一日歩いてシャワーを浴び、汗を流したあと気持ちは全く切り替わる。同じ巡礼路を歩く人々と楽しむ食事は巡礼に彩を与える重要な要素だったと思います。

(スペインの扉)

- その長い旅路を終えた後、ご自身の中に何か変化というか、新しい自分との出会いのようなものは?

(中西さん)

- 巡礼での生活と日本での生活とが対比され、長い人生という旅路において友や家族と過ごす大切な時間を無為に過ごしていたことに気づかされました。日本に戻って生活を見直すきっかけとなりましたね。

 

”-さてここから先は、サンティアゴまでのすべての道は道が連れて行ってくれるだろう。(道中にある巡礼者の銅像の石の土台に刻まれていた言葉。)写真- スペインの扉

“さてここから先は、サンティアゴまで通じるすべての道も一本道になる。(道中にある巡礼者の銅像の石の土台に刻まれていた言葉。)写真- スペインの扉

 

一度体験すると戻りたくなる、巡礼ロスト

(スペインの扉)

- 3年以上もかけた壮大なプロジェクト。その巡礼を踏破した後、日本での生活に対する姿勢も変わられたとのことですが、 今度は「巡礼ロスト」のような状態にはならなかったのでしょうか?

(中西さん)

- 聞き出し上手ですね。(笑) 「巡礼ロスト」・・・。自分では意識していなかっ たのですが、終わったはずの巡礼をまた来年から始めようとしている自分が今確かにいます。気持ちを保つのに巡礼路で撮りためた写真を眺めて日々すごしたりして。

(スペインの扉)

- 巡礼路を歩きながら感じること、得られることって人それぞれ異なると思うのですが、中西さんの場合はどういったことだったのでしょう。

(中西さん)

-  自分を電池に例えると、巡礼に行くといろいろな人の思いやりに触れて自分の心がいっぱい充電された感じがします。自分が満たされていると、日本に帰って自分の生活に戻った時に他人を思いやる余裕がでる。自分の電池でほかの人を充電しているような感じです。

(スペインの扉)

- 自分が充電池。巡礼はきっと“無”で臨んでも、知らず知らずに周囲の人から何かを受け取っているという感じでなのですね。私の場合、職業柄、北スペインの巡礼街道や町や村には行ったことがありますが、自分の足ではなくバスであったり、車だったりずるしてきちゃった。自分の足で歩くのだから体力の消費も激しいのに、逆にエネルギーをもらって帰ってくる。これは歩いてみないと分からないことですよね。

(中西さん)

– お住まいのマドリードからも道がありますよ。巡礼-カミーノは家から始まる、と言われていますし。小さなお子さんがいらっしゃるとのことですが、その場合はホタテガイと矢印を探すだけでも巡礼気分で楽しいのではないですか。

(スペインの扉)

- 確かに。欧米諸国の巡礼者の姿をよくテレビのニュースで見かけますが、自分の足で歩ける小さな子供はもちろん、乳母車を押しながら歩くお母さんたちもいたりして驚きます。ありのままの自分で望めばいい、そんな気がしますね。

中西さん。今回は素敵な体験談をご共有頂いてありがとうございました。一人でも多くの人がそのすばらしさに出合う機会に恵まれるとよいですね。

 

今日も最後まで読んでいただき有難うございました。

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