バレンシアの秋は恋人達の秋

by 土屋 寛子

モカドラー 写真:www.lasprovincias.es

大好きな秋がやって来ました。収穫の秋、食欲の秋、読書の秋、恋人たちの秋。ん??秋が大好きなスペインの扉はこじつけも好きなのね? でもまんざらこじつけだけではない、変わった恋人たちの秋のイベントを今回のスペインの扉ではご紹介します。

10月9日 バレンシア州の記念日

バレンシアと言えば、今や地中海の太陽をたっぷり浴びたバレンシアオレンジだけでなくパエーリャ、ラス・ファリャス、世界遺産建造物-絹の商品取引所/LA RONJA(ラ・ロンハ)、建築家-サンティアゴ・カラトラバの故郷、バレンシアテニスオープン開催地として日本でもここ近年ずいぶん知名度が上がってきました。地中海地方の温暖な気候に恵まれたバレンシアを訪れるのにはあまり季節を問いませんが、もしも秋にスペイン旅行を計画するなら、10月の初旬、できるなら10月8、9日にバレンシアに滞在するのがスペインの扉の一押しプランです。(真夏は日本と同じくらいの気温かそれ以上、かつ湿度もかなりあがりますので、スペインらしいさわやかさは期待できません。)なんといっても10月9日がバレンシア州の記念日にあたり、前日~当日は市内でさまざまな記念行事、メモリアルコンサート、パレード、9日の夜には記念花火大会などが開催されて大変賑やかです。

カタトラバの代表作品-バレンシア市 芸術科学都市。Photo by DAVID ILIFF. License: CC-BY-SA 3.0

カタトラバの代表作品-バレンシア市 芸術科学都市。    Photo by DAVID ILIFF. License: CC-BY-SA 3.0

 

祭事の起源は13世紀、レコンキスタ真っ只中であったイベリア半島のアラゴン王国の時の王-ハイメ一世率いる軍隊が1283年にバレンシアの地をついにイスラム教徒より回復した史実まで遡ります。1365年10日9日からバレンシアの建国の父であるハイメ一世に感謝の思いを込めて、現在ではバレンシアの州旗が市役所に掲げられ最後はハイメ一世の銅像まで旗を掲げてパレードが行われます。

 

バレンシアの民族衣装に実を包んだ女性達。ハイメ一世の前にて。 写真:www.noticias964.es

バレンシアの民族衣装に実を包んだ女性達。ハイメ一世の前にて。 写真:www.noticias964.es

 

10月9日はバレンシアのバレンタインデー

10月9日はこのような歴史的に重要な意味をもつ日でもありますが、市民にとってはもうひとつの楽しみが重なっている日でもあります。一般ではDIA DE LOS ENAMORADOS VALENCIANOS、正式なバレンシア語ではDIA DE LA MOCADORÁ(RAにアクセントがありますので発音的にはモカドラーと聞こえます)。バレンシア流バレンタインデーです。このお祝いのことを知ってから興味が沸いてすこし調べてみたところ、MOCADORAとは“絹で包んだ(贈り物)”という意味だそうです。14世紀~18世紀にかけて絹の取引がバレンシアの商業で大変な重要性を占めていたため、絹のハンカチで贈り物を包んだなんていういう小粋な文化が発達、定着したのかも、素敵だなぁなんて単純に一人ロマンティックな気分になったのもつかの間、調べていくうちに実はそんな単純でロマンティックな背景ではなかったことが分かりました。

色とりどりのモカロダとともに華を飾るPiuletaとTronaor。

色とりどりのモカドラーとともに華を飾るPiuletaとTronaor。          写真:El MUNDO

 

ではなぜバレンタインデーになったの?

現代では10月9日に男性が女性にハンカチに包んだマジパンのお菓子をプレゼントして気持ちを表現するというようになっていますが、この習慣はよくあるマジパン製造者たちがマジパンの販売を伸ばす商業目的に始めたのではなく、前述のハイメ一世がバレンシアの国土を回復したことに関係しているというから大変な長い伝統のある文化だといえそうです。でもいろいろ資料を読むうちに分かったことは、決定的にこの習慣の起源を語る書物はどうも残っていないようで、専門家達の間でもいまだに協議が続いているということでした。一般的に語られていることを大まかに纏めてみますとどうも次のような感じでした。

ハイメ一世が13世紀-1283年にバレンシアの国土をイスラム教徒から再征服した。
その100年後にあたる1383年、バレンシア建国を祝う行事が10月9日に始まり、バレンシアで収穫された果物や農作物を献上物としてささげ、打ち上げ花火などが打ち上げられ盛大に祝われた。その後毎年同様の祝祭が開催されるようになった。
18世紀になり、スペイン継承戦争で勝利を挙げたブルボン王朝のフェリペ5世がスペイン新国王に着くと、ロケット花火の打ち上げを含め大変「うるさかった」バレンシアの10月9日の祭りを禁じた。
それに反発したバレンシアの市民が菓子でロケット花火を模しフェリペ5世の禁止令に反発。そのロケットを模したものがpiuleta(ピウレタ)とTronaor(トゥロナオール)。そこにマジパンで模った果物や野菜(mocadora-モカドラー)も作り添えて祭りを継続する。

どうも俗に見てこのpiuleta(小さなロケット花火)とTronaor(ロケット花火の中でも格別に音の大きいタイプのもの)が男女の生殖器に見える、かつマジパンの菓子は豊饒を象徴する、というあたりからバレンシアでは10月9日、モカドラーを送る日がバレンタインデーのような存在と考えら得るようになったようです。まんざらこじつけではないことがお解りいただけたでしょうか?

 

なんとなく和菓子を彷彿させる、スペインのお菓子にしては繊細さを感じる珍しいスイーツ、モカドラー。主原料はアーモンドと砂糖です。            写真:www.lasprovincias.es

カラフルなモカドラーは見ているだけでも本当にかわいくて楽しいです。10月9日が近づいてくるとバレンシア中のお菓子屋さんでそれぞれのモカドラーが店先に並んで街歩きのウィンドウショッピングも一段と楽しいですね。

今日も最後まで読んでいただき有難うございました。

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