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スペインで暮らす~医療事情 民間医療保険編~
スペインで暮す~医療事情 公的医療保険編では国営の医療保険サービスについてお話をいたしました。この記事では、民間医療保険機関、医療サービスについてお話したいと思います。(公的医療保険編の記事をまだ読まれていない方はこちらからどうぞ。)
なぜ民間医療保険に加入するの?
スペインには優れた社会保障制度があり、普通に生活していればプライベート保険に加入する必要はあまり感じられないはずです。それでもスペインにも様々なタイプの民間医療保険(スペイン語:Seguros médicos セグーロス・メディコまたはSeguros de salud セグーロス・デ・サルー)が存在します。
「どんな保険に入っているか?」と数人の質問すると、必ず一人や二人民間の医療保険に加入している人に遭遇します。多くの理由は、「セグリダ・ソシアルの先生が嫌い」だとか「近くにいいクリニックや病院があっていきやすい」、「プライベートのクリニックのほうが予約が取りやすい。」「プライベートのほうが丁寧に診察してくれる」など、大変納得しやすい回答が返ってきます。事実、筆者もこちらに暮し始めて1年半頃にまったく同じ理由でプライベートの保険に加入しました。健康な間はセグリダ・ソシアルで十分ことが足りるのですが、しつこい症状が続いたり、専門医による診察予約や検査予約が半年以上先まで取れないなどで、苦しむことも多々あります。そういった思いをすると、「やっぱり、セグリダ・ソシアルだけでは不安。」という思いが頭を横切るもの。また、そういった理由でなくても、社会保障(スペイン語:Seguridad Social セグリダ・ソシアル)の税金をスペイン国家に支払い、国民医療保険(スペイン語:Seguro Público)に加入できない場合や、国民医療保険のサービスに満足できない場合など、民間医療保険に加入しておいたほうがよい場合がありますね。
では、数ある保険会社の商品からどういったものを選んだらよいのでしょう。次の項目ではどういったタイプの保険が存在するのか簡単に見ておきたいと思います。
民間医療保険の一般的な商品タイプ
スペイン語がわからない、スペイン語はある程度理解できるけれど細かいことはよくわからない・・・という方も多いでしょう。一般的な医療保険会社の商品枠組みがどのような言葉で表現されているかを確認していきながら理解していきましょう。
まず保険契約書のことをスペイン語でPóliza de salud (ポリサ デ サルー)と呼ぶことを覚えておきましょう。そしてその契約(サービス範囲)にはいくつかのタイプがあります。
1.Cuadro Médico sin copagos クアドロ・メディコ・シン・コパゴス
まず最初のここのキーワードはクアドロ・メディコ。これはスペイン語で「医療サービス一覧」という意味で、保険商品を通じて利用できる医療機関やサービスの一覧のことをさします。次のキーワードはシン・コパゴス。SIN-シンとはスペイン語で「無し(英語のwithoutに相当)」の意味で、COPAGOS-コパゴスとは、「一部負担」の意味です。つまり「負担金無し」商品ということになります。どのこ保険会社のものであっても、この保険商品を契約していれば、サービス一覧に表示されている医療機関、クリニック、専門医、医療サービスを受けても追加で支払う必要がないということです。
2.Cuadro Médico con copagos クアドロ メディコ コン コパゴス
3.Cuadro Médico mas( o con ) reembolso クアドロ メディコ マス レエンボルソ(またはコン レエンボルソ)
4.Producto Médico sin hospitalizaciónプロドゥクト メディコ シン オスピタリサシオン
5.Dental デンタル
プライベード医療保険の平均的な月額支払い金額は?
さて、実際にプライベート医療保険への加入を検討しようと思われている場合、インターネットにて各保険会社のサイトからサービス内容、料金などを実際に検索して一つ一つ見ていくのももちろんよいのですが、一番よい方法は、プライベート保険に加入している人が周囲にいないか聞いてみることです。不思議なことに、公的医療保険編の記事にて触れた通り”無料”の社会保障保険があるのに、民間医療保険に任意で加入している人が少なくありません。事実、筆者自身が民間医療保険に加入したのはスペインに暮し始めて、公的医療保険制度のプラスとマイナスを実感し始めた1年半が過ぎたころでした。
筆者が加入をした理由は、公的医療制度を利用しても専門医や精密検査の予約がすぐに取れないことに対して苛立ちとストレスに感じるようになったからでした。生まれ育った土地を離れ、水、食事、生活リズム、環境の変化に順応する間に、メンタルだけでなく身体レベルでも見えないレベルで様々なストレスに対応してきた疲れが、ここでの生活に慣れ始めたなぁ、と感じるようになったころにどっと出てきた頃です。病気で倒れても看病してくれる家族がいない、という不安が募り、すぐに診察をしてもらえるプライベード医療保険に加入することに決めました。
日本でも医療保険に加入していたことはないので、サービスのことや利用の仕方など、右も左もわからない上に、スペイン語で・・・。というわけで手っ取り早く当時の仕事の同僚が勧めてくれたAdeslaという保険会社と契約することにしました。20代の未婚女性の枠、前述の項目の2のタイプの商品で、当時はまだユーロではなくペセタの時代。月々の支払いは7000ペセタくらいだったよう記憶しています。

スペイン プライベート医療保険人気会社
今はどうでしょうか?筆者の周囲に聞くとやはり大手のAdeslasやSanitasが一番よく聞く保険会社です。
例えばAdelsas。こちらの会社の一番の人気ポリサは全項目の2と3のタイプがセットになった『Adeslas Plana』というもので月額45ユーロ~。このプランではスペイン国内の医療機関では限度額500ユーロまで、50%の払い戻しが保証されていたり、外国への旅行中の保険などもカバーされていて良心的な価格だといえます。
Sanitasはどうでしょう?こちらの会社では、かなり制限はされていますが、比較的若く健康な人を想定した2と4のタイプが一緒になったベーシックプランなら23,50ユーロ~。他には負担金無し(Sin copagos)でデンタルタイプもセットになったものだと80~85ユーロ~ぐらいしています。
これから検討してみよう、と思われている方のために、各種保険商品を比較検討できるサイトをご紹介しておきますね。
isalud(スペイン語のみ) : www.isalud.com/Seguro_Salud/Comparador
acierto.com(スペイン語のみ : www.acierto.com/salud
Rastreator(スペイン語のみ): comparador.rastreator.com/Comparador/Seguro_Salud
スペインで歯医者に行くと費用はどれくらいかかる?
母国であっても歯医者からはどうも足が遠のいてしまうという方も多いのではないでしょうか。
スペインへ移り住む前に、日本でなじみの歯医者さんにきちんと足を運んで、治療しなくてはいけないところがあれば治療を済ませてくるのが一番ですし、一時帰国時に日本で歯医者へ行くのは検診だけという、健康な歯の方にはあまり普段は問題にはならないかもしれません。
でも歯の問題って、いきなり訪れるものなのですよね。例えば詰め物が取れてしまったとか、その為に歯が痛む、とか。誰にでも起こりうる問題です。
そして、原則、社会保障医療保険サービスでは歯の”治療”は行ってくれません。こちらでは歯の定期健診は行ってくれますが、治療となると民間に頼るしかないのです。そして筆者の知る限り、日本語でアテンドしてくれる歯医者さんはスペインにはないと思います。ですから、余計に緊張しますね。ただし、その検診中にすぐに対処が出来る、あるいはしたほうが良い、と歯科医が判断した場合には、何らかの処置をしてくれるケースがあるようです。
例えば、数年前の筆者のエピソード。
ある日突然、食べ物を食べているときに「ガリ~!」と何かを噛んでしまいました。やってしまったな、と思ったのですが案の定、その後からずっと歯痛が伴うように。どうしようかな、いやだな~、なんて悩むこと数日。やっぱり歯の痛いのは消えないので、まずは社会保障の歯医者さんに意見を聞こう、と足を運ぶと、「痛いって?それはそうでしょう。歯が根っこから真っ二つに割れているよ。どうしようもないね。」と。ショックでぽかんとしている私に、「抜いてしまうしかないよ。」私はそれがそこで受けられる最大・最善のアドバイスだと思っていたのですが、その場ですぐに
「はい、口あけて。」
「ぐき!!」
「ひぃ~!」
とペンチで何の前触れもなく抜き取られました・・・。覚悟できていなかったんですけど・・・・。
とまぁ、こんな荒治療をしてくれるケースもあるみたいです。
一般的に、マドリードの歯医者さんですと、詰めたものを歯医者へ持っていってもそれを再利用して詰めなおす、ということはしてくれません。通常新しい詰め物をその場で詰めて、一回の治療で済みます。その費用は25~40ユーロ前後。
虫歯の治療なら、軽度のものは一回の治療で済みますが、痛みを伴っていたり進んでいる虫歯だと、やはり2、3回の通院が必要となってくるでしょう。歯の治療の為には、まず最初にレントゲンをとる場合が多く、その経費が30~45ユーロほど。そして虫歯の治療そのものには35~50ユーロ(一回)ほどかかります。(歯医者の人気度にもよりますが、大きな医療チェーンが運営している歯医者の場合は、そうでない歯医者さんに比べて治療費が安いというのが私の経験から得た結果です。)
他に、一度歯医者に行くと「歯の衛生管理が行き届いていませんねぇ~。掃除をしておきましょう。」という流れとなります。もちろんやりたくなければやらなくていいのですが、参考までに歯の掃除には一回25~35ユーロ前後くらいかかります。そしてこれが痛い!!んですよねぇ。「痛いの嫌なので・・・」と言えば(言えれば)麻酔をした上で行ってくれるところもあるので、ためしに言ってみるとよいでしょう。
歯医者さんはとっても大切な存在だと思います。街の中にはたくさんの歯医者がありますが、やはり信用できる歯医者さんをいきなり見つけるのは至難の技。万が一見つかっても「急な痛み」に「まったく知らない患者」が電話で予約を入れようとしても大混雑ですぐに予約が取れない、ということが常です。健康なうちから、歯医者を見つけておいて、定期健診をするとか、半年に一度は歯の掃除と衛生管理を行うようにしておくと、万が一の急な痛みにも何とか時間を作って応じてくれるようになるものです。スペインでも歯医者さんの予約は都合よくすぐ取れない、と覚えておくとよいですね。
知っておきたいベーシックスペイン語
最後に、お医者さん(médico – メディコ) や歯医者 (dentista – デンティスタ)に行かなくてはならない時に、知っておいたら役にたつベーシックスペイン語をリストアップしておきます。太文字にしたローマ字にアクセントがきます。
内科 medicina (メディシーナ)
症候 síndrome(シンドロメ)
アレルギー alergia (アレルヒア)=>何のアレルギー?の「何」には特徴を現す″de”ではなく”a”を使います。
花粉症 alergia al pólen (アレルヒア アル ポレン)
インフルエンザ gripe (グリペ)
=> グリーペかな?と思ったら迷わずすぐにメディコ・デ・カベセラに会いに行ってください。あなたが会社員であれば、ほぼ確実に4,5日の自宅養生を指示してくるでしょう。
熱 fiebre (フィエブレ)
下痢 diarrea (ディアレア)
胃腸炎 gastroenteritis (ガストロエンテリティス)
=>冬に会社の同僚が病欠になったときによく聞く原因がこれです。
薬 medicina (メディシーナ)
専門家 especialista (エスペシアリスタ)
歯の充填剤・詰めもの empaste (エンパステ)
虫歯 caries (カリエス この単語は単複同形)
おまけ。
スペイン語でベッドのことをCAMA(カマ)と言いますが、以下の2つの例文を比較してみてください。
1.私はベッドに行って寝ます。 「Me voy a la cama a dormir」
2.母は病気で伏せています。 「Mi madre está en cama.」
1には定冠詞のla(ラ)がカマの前についていますが、2の例文では定冠詞がありませんね。定冠詞一つ付く・付かないだけでこれほど意味が変わってくるので、一度に覚えておくとよいでしょう。
備えあれば憂い無し。
勝手のわからない、常識や生活概念がそもそも異なる外国での生活では、普段から自分に必要な情報を集めていくのが大切です。皆様のスペインでの生活が少しでも快適で素敵なものとなりますように!
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