毎年この時期に開催されるスペイン最大の映画の祭
映画の祭典ではありますが、グラミー賞のようにエンターテーメント業界の豪華な面々が舞台に登場しショーを賑わせるので、毎年授賞式の様子がテレビで放映されます。今年のGOYA賞は色々な意味で話題を提供してくれましたが、中でも大きな反響を呼んだのが、今回ご紹介するアーティスト、Rosalia(ロサリア)。
ロサリアは15歳の時に“Tú sí que vales”というスペインで大人気のタレント発掘オーディンションに参加。それ以来、歌の世界で徐々にキャリアを重ねてきた若手女性シンガーです。
2017年にアルバム「Los Angeles」を発表し本格的にデビュー。同年ラテン・グラミー賞の「最優秀新人賞」部門でノミネート。さらにこのアルバムは2018年のラテン・グラミー賞でも「最優秀レコード賞」部門、アルバム曲「Malamente」は「最優秀楽曲賞」部門にてノミネート。そして「最優秀フュージョン・アーバン」部門と「最優秀オルタナティブソング」部門の2部門にて見事受賞しています。受賞の様子はこちらから見られます。
ちなみに2018年のラテン・グラミーではRosaliaを含めて、私も大好きなウルグアイ出身の天才アーティスト/ホルヘ・ドラクレスも受賞したりして、スペイン語圏アーティストの類稀い本物の才能が音楽業界最大の舞台で見事認められ、とてもよい内容の結果になったなと思っています。
さて、今最
そんな彼女が選んだ曲はスペイン人なら誰もが知っている、国民的歌謡曲、「Me quedo contigo」。
この曲はLos Chunguitos (ロス・チュンギートス)というグループが80年代に発表し一世風靡した名曲です。(オリジナルのも聞いてみてください!ビデオはここから。)
有名な歌を別の歌手が歌う事は、聞き手の中でオリジナルのイメージが強すぎてアレンジ、バージョンが受け入れられないかも、という危険性を含んでいます。事実、当人も「リスキーで賭けの様な歌を歌ことになる」と認めていたようです。ところが彼女が最初のキーを発生した途端、会場には静まり返り、わずか数分であった歌が終わると、ベテランの業界人で埋め尽くされた授賞式の会場中が彼女の前に文字通りひれ伏したのです。この映像はYouTubueにすぐに公開され、たったの一夜で100万回以上の再生回数を記録しています。ゴヤ賞で披露したロサリアの歌声はこちらのビデオで楽しめますの、まずはこちらを見てみてください。何度聞いても鳥肌が立ちます。それは歌詞が分かり感情移入できるからという理由ではなく、彼女の声から伝わるエネルギーというか、感情の波動というか、そういった力だと思います。
ところが、そんな様子を見た後、彼女の大ヒット曲「Malamente」のPVを見た個人的な感想は一言、「残念~。」でした。
それは彼女自身に対する気持ちではなく、スペインの音楽業界のプロデュースの仕方に対する思いでした。これだけ実力のある、可能性のあるシンガーをどうしてアメリカでの人気取りを意識したような、ありきたりの「かわいいし、歌も上手なシンガーのセクシー&挑発」路線に仕立てようとしているように思えてならなかったからです。
「また一つの才能が、プロデュースの悪さでつぶされてしまうな~」と思ったのです。(だからスペインにはセルフプロデュースのアーティストが多く、インディーズレーベルに属するアーティストの方がメジャーレーベルよりも個性的で輝いているのです。まぁ、個人的な意見ではありますが。)
ところがその感想は、単純に私自身が彼女のバックグラウンドを知らずに、曲だけを聴いた無知ゆえに作ってしまった先入観の産物以外の何者でもなかったということを後で思い知ることになったのです。
社会、人権、精神性を追求するロサリアの世界観
2018年にはプロデューサーが代わり、彼女の中で音楽に向かう課題として取り上げていた「フラメンコと他ジャンルとの融合」をもっと前に出した一連の映像作品を発表してきました。これらの映像作品は「カタルーニャ音楽専門学校」で音楽を本格的に学んでいた彼女の「卒業作品」だと言われています。そのシリーズの歌がとてもいい!!
スペインならず世界で深刻な問題となっている女性の権利、DV、差別など、シリアスなテーマを若い彼女だからこそ表現できる言葉使いで歌詞に表現し、それらを現代フラメンコの流れを残しつつ、世界の女性シンガーから影響を受けたことが聞き取れるポップスと融合させたリズムとメロディーに乗せた一連の歌は、これまでのスペイン音楽の枠を完全に取り除いたとても完成度の高いものに仕上がっています。 やっとこうゆうアーティストがスペインから出てきたか、と私の中でも大きな期待が膨らみ、彼女が何処まで伸びるのか、わくわくせずにはいられません。
そんな彼女の成長の足取りを追いながらこの曲-BAGDADを聴くと、私の中で「残念」から今では「すごいモンスターが出てきたよ。」に変わりました。(先入観って恐ろしいしおろかですね。)
初めて彼女の歌を聴く人に「Bagdad」を紹介するのは少しリスキーかとは思ったのですが、敢えてこの曲を選んだのは、彼女の澄み切った透明感のある声、ぶれない歌声、表現の幅とこれからの可能性を抜群に表現しきっていると思えるからです。
フラメンコを歌うと、若さゆえ深みが足りな~い、と思う部分はちらちらあるものの、久しくビッグスターが出てこなかったスペインの音楽業界。彼女は間違いなく恐ろしいくらいの大物シンガーになるだとうなぁ確信しています。
Rosalia 公式ウェブサイト:https://rosalia.com/
最後に筆者の一番気に入った曲をこちらでご紹介しておきます。
お勧めの一曲:BAGDAD (2018年)
スペイン語の歌詞
Las llamas van al cielo a morir
Ya no hay nadie más por ahí
No hay nadie más, sentaíta dando palmas
Las llamas van al cielo a morir
Ya no hay nadie más por ahí
No hay nadie más, no hay nadie más
Pelo negro, oscuro
Bonita pero apena’
Sentaita, cabizbaja dando palmas
Mientras a su alrededor
Pasaban, la miraban
La miraban sin ver na’
Solita en el infierno
En el infierno está atrapa’
Sentaita, las manos las juntaba
Que al compás por bulerías
Parecía que rezaba
Sale un ángel que cayó
Tiene una marca en el alma
Pero ella no se la vio
Sentaita, al cielo quien rezarle
Prendaita de…
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